エンジニアリングリーダーとして、マラソンで学んだこと
午後3時の判断が、なぜか最悪になる
正直に言います。僕は毎日午後3時を過ぎると、判断力が落ちます。
朝10時のチーム会議では「ああ、このリファクタリング案は今やるべきじゃない」と冷静に判断できる話も、午後3時になると「でも、まあいけるんじゃないか」って感じになる。夕方5時には「やめておこう」に戻るんだけど、その間の数時間で、本来なら「NO」と言うべき判断を「YES」に寝返らせてしまったことが何度あるか。
エンジニア軍団の長として、毎日、朝から数百~数千の判断を重ねます。
- 技術選定「このフレームワークを採用すべきか」
- 人事判断「このエンジニアはどのプロジェクトに配置すべきか」
- スケジュール判断「この機能は今リリースできるか」
- 組織判断「チーム構成をどう変えるべきか」
決断を積み重ねていくと、脳が疲弊していくんです。それは知識不足じゃなくて、本当の意味での脳の燃料が枯渇している状態なんだと思う。
では、どうしたらいい?
ある日、友人が言いました。「走ってみたら?」
走る?冗談でしょ。僕は朝型で、早朝は1on1ミーティング。日中は技術判断。夜はスタートアップの友人と飲む。どこに走る時間があるのか。
でも、その友人は辞めなかった。「いや、マジで。試しに、3km走ってみてよ」
抵抗しました。エンジニアである僕にとって、マラソンなんて非効率な時間に思えた。でも、心のどこかで「このままじゃ、午後3時の判断力が戻らない」という危機感があった。
だから、試してみました。
「あと2km」の呪文
初めて走った時、正直なところ地獄でした。1km走ったら「もう無理。終わり」って思った。でも、その時、友人の声がよみがえった。
「今のこの2kmに集中しろ。残りの距離は忘れろ」
「残りの距離は忘れろ」 ── これが、すべてを変えました。
3kmを走ろうと思ったら「あと2km残ってる」って絶望が襲う。でも「今の2kmだけ、ちゃんと走ろう」と思うと、呼吸が整う。足が前に出る。
これ、エンジニアリング判断にそのまま当てはまるんです。
四半期目標の達成が難しい状況の中で「あと2ヶ月でどうすればいい」って思ったら絶望です。でも「今週、このバグをどう解くか」に集中すると、動けるようになる。
「今この瞬間に集中する」って、誰もが聞いたことがある言葉だと思う。でも、マラソンで体験してみて初めて、それが本当の力だって気付きました。
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限界を超える、でも折れない
半年経った時、ハーフマラソン(21km)に出ました。
15km地点で、脚が動かなくなりました。筋肉が悲鳴を上げてるんじゃなくて、脳が「もう無理」って信号を送ってくる。これを「ハンガーノック」って言うらしい。
その時、脳が本当に言うんです。「歩けばいい」「やめちゃえばいい」「完走しなくてもいいじゃん」
正直に言うと、その瞬間、僕は歩きました。3km歩いた。でも、ゴール手前200mで、また走り始めた。完走したかったわけではなくて、ただ「ここでやめたくない」って感情だけ。
その体験がすべてを変えました。
エンジニアリング組織でも、同じことが起こる。大規模なマイグレーションの途中で「もう無理」って脳が言う。レガシーコードとの戦いが3ヶ月続いて、チーム全体が「本当に必要なのか」って疑い始める。その時に、15km地点で歩いた僕は知ってた。「ここで止めたら、本当に終わりなんだ」って。
ハンガーノック状態での判断は、最悪です。でも、その最悪な状態で「どう動くか」を知っているのと知らないのでは、全く違う。
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でも、すべてが解決したわけじゃない
正直なところ、マラソンを走り始めて1年経った今でも、午後3時の判断は完璧ではありません。
走った日は、少し冴えてる。でも、走らなかった日の午後3時は、昔と変わりません。メンタル的な弱さはまだそこにある。
何が変わったのか?
弱さとの向き合い方が変わった。
昔は「午後3時に判断力が落ちるのは、自分の能力不足」って思ってた。だから無視してた。脳が「疲れてます」って言ってるのに、無視して意思決定してた。
今は、それを認める。「今、脳が疲れてる。その中で最善の判断をしよう」って。
完全に疲労を排除するんじゃなくて、疲労を受け入れて、その上で判断する。これが難しいんですけど、マラソンで何度も何度も「疲れながらも前に進む」を体験したから、できるようになった。
組織での判断と、マラソンでの判断
あるプロダクトの大きなピボットが必要になりました。技術的な負債が溜まりすぎて、新機能を入れるのが本当に難しくなってた。
その時の判断は、本来なら「ゼロから作り直す」だったんです。でも、現実には「新機能を2ヶ月で出さないと、ビジネス的に終わり」という状況だった。
多くのエンジニアは「どちらかを選べ」って迫られる。でも、僕が学んだのは、「どちらもやる」という判断。新機能は短期的に応急処置で出す。同時に、長期的なリファクタリングをチームの一部に任せる。
これは「ハンガーノック状態で、どう走るか」という判断と全く同じだった。完全な解は待ってない。不完全な状態で、次のステップを決める。
実際、何が変わった?
マラソンを始めて1年。正直なところ、「人生が変わった」までは言いません。でも、確実に何かが違う。
- 午後3時の判断が、昔ほど悪くない(完璧ではないけど)
- 「疲労」を敵として見るんじゃなくて、「パートナー」として見るようになった
- 限界近くの状態での判断に、少し自信が持てるようになった
- チーム内の士気が、わずかに上がった
最後のやつは、不思議なんですけど。僕が「疲れながらも走る」という姿勢を見せるようになったら、チーム全体が「苦しい局面でも進む」というマインドセットに変わった気がします。
でも、弱さはまだそこにあります。今も、午後3時の僕は疲れてます。だから、重要な判断は延期するようにしてます。「疲れた状態での決定」は、自分がどれだけ強くなっても、避けた方が無難だって学んだから。
もう一つ、隠していた話
実は、この友人に「走ってみたら?」と言われた背景には、僕のメンタルがボロボロだった時期があったんです。
スタートアップから大企業へのジョイン直後、エンジニア組織のスケーリングに失敗しました。30人のチームが80人になる過程で、文化が壊れた。僕の判断ミスもあった。
その時、本当に悪い状態だった。心療内科に通ったレベル。睡眠も浅いし、朝起きるのが辛かった。
その時に「走ってみたら?」って言葉でした。正直、最初は「そんなんで治るわけない」って思ってた。でも、走り始めたら、少しずつ変わった。
科学的な説明とか、ホルモンの話とか、そういうのはいろんな本に書いてあります。でも、実際には、もっとシンプルです。
「疲れながら前に進む」を何度も体験すると、心が強くなる。
それ以上でも以下でもないと思う。
では、どうすればいい?
別に、フルマラソンを走る必要はない。
週2、3回、5km程度の短い走行。その中で「あと1km、頑張ろう」って経験を重ねる。それだけで、脳は変わります。
エンジニアリーダーとして忙しい人には、これだけで十分だと思う。ハーフマラソン、フルマラソン、トライアスロン。段階的に難易度を上げてもいいし、別にそこまでやらなくてもいい。
でも、大事なのは「距離」じゃなくて「限界を超える体験」。そして「疲労の中での判断」です。
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最後に
エンジニアリングリーダーという職業は、「完全な判断」なんて求められてない。むしろ、「不完全な状態での判断力」が求められてる。
朝は皆、冴えてます。でも、午後3時も、夜10時も、判断を迫られる。その時に、どう動くか。それが、本当のリーダーシップだと思う。
マラソンは、その「不完全な状態での動き方」を教えてくれます。
科学的な説明も、データも大事です。でも、自分の脚で21km走った時の、あの「脳が『もう無理』と言ってるのに、脚が動いてる」って感覚。それが全てを変えます。
だから、今週末、一度走ってみてください。3kmでいい。その中で「あと2km」って呟いてみてください。
その時に何が起こるか。その感覚が、会議室での判断を少しだけ変えるかもしれません。
それだけで十分だと思う。